主なアイデアとコンセプト

脱専門性

異なる専門の人々同士が連携することを「interdisciplinary」(学際的)と言うけれど、脱専門的なプロジェクトというのは、いくつかの専門分野の総和ではなく、真新しい何かを意味している。「脱専門性」という言葉自体、定義が難しい。これを私たちは、従来の学界的な意味での専門分野の区分けに適合しない何か、もしくは誰か、すなわち独自の語句、フレームワークや手法をもつ研究分野、の意味に解釈している。研究者の多くは、論文審査(ピアレビュー)のある著名な専門誌への掲載回数でその実績をはかられる。論文審査は通常、ある人が属する専門分野の実力者たちが、その人の仕事をレビューして、重要かつ独創的であるかどうかを判断するというものだ。この構造ゆえ、研究者は型破りゆえにハイリスクなアプローチよりも、自分の専門分野での少数の専門家に認めてもらうことに注力しがちになる。この力学が、より狭い範囲の内容をより深く探求していくという、研究者のステレオタイプを助長している。超専門化により、異なる専門分野の人々が他分野の人々と連携することはおろか、コミュニケーションすらとりにくくなってしまっているのだ。私たちにとって脱専門的な研究とは、数学者 Stanislaw Ulam(スタニスワフ・ウラム)の有名なコメントに類似するものだ。彼は非線形物理学の研究を「ゾウ以外の動物の研究」のようなものだと称した。脱専門性とは、まさしくゾウ(専門分派)以外の動物に着目することを意味する。

「すべての科学」を表す巨大な1枚の紙をイメージしてもらいたい。各専門分野はこの紙の上の小さな黒い点であり、点と点の間にある広大な白紙部分が脱専門的な余地に当たる。この白い余地でのびのびやりたい人は大勢いるものの、そこに対する出資は非常に限られており、黒い点のどれかに専門的な足がかりがないと、在職権のあるポストに就くのはさらに困難となってしまっている。

連携して大がかりなプロジェクトに取り組むというこの考え方により、分野の垣根を越えて研究者たちが繋がっていき、多数の分断された専門分野ではなく、一つの科学へと融合していくのではなかろうか。専門分野はまだ必要であり続けるだろう。しかし、このような高次の取り組みに注力するとともに、学界や研究費のあり方を改革することで専門分野間の広大な白紙部分、脱専門という大いなる余地で活躍する人たちの数を増やしていくべき頃合いだと、私たちは考えている。

新しいアーキテクチャ

Bauhaus Wheel Bauhaus Original Curriculum - Year: 1920–1930

かの有名なバウハウスの教育理念概要図に目を向けてみると、100年前のバウハウスでは、新素材・新分野・新教育のカリキュラムが、新しい建築や感性、デザインを生み出す力となったことが分かる。

そこで私たちは、ここで新たな提案をしたいと思う。それは、ニューテクノロジーとは、より深い理解が必要な新素材であり、これから人間が作り出す創造物や根本的な想像力を変えるチャンスがある、ということだ。例えば、建材を例に考えてみよう。金属やガラスといった新しい建築技術が登場した時も、木材は建材として生き残り続けた。これと同じように、暗号やゲノミクスのようなニューテクノロジーも、単に既存のパーツがこれらに取って代わることはないだろう。むしろ、これらが出現したことで、何を創造することができるのか、また何を創造すべきなのか、そして建築に対してどうアプローチすべきなのかというという私たち自身の感性が根本から覆ることになるものなのだと考える。

Joi Wheel 3デジタル変革ウィール

変革

変革とは、「物事を根本から変えること、新しいものにすること」を指す。また、「トランスフォーメーション(Transformation)」という単語は、何かを変える、新しいものを作るという意味を持つ。変革という言葉は、「変化する」という意味で使われ、より「大きな変化」が起きるときに使われる。ここでは、それぞれの漢字の意味と由来を説明していきたい。

「変」という漢字は、「神への誓いを込めた器を打つ」という意味を持つ(これについては、諸説あり)。このため、「誓いを破る」=「変化させる」という意味で使われるようになったそうだ。「変」の旧字体は「變」。漢字を構成するそれぞれの要素を見てみると、その意味が自ずと分かってくるだろう。

一方で、「変革」で使われている漢字の「革」は、「獣の皮を開いて加工したもの」という意味を持つ。つまり、「革」は 「革になる=自然の状態から外れる=新しいものに変化する」という意味を持つ。このことから、「革」は「新しいものに生まれ変わる」という意味で使われるようになったと考えられる。

つまり、この2つの漢字を組み合わせることで、「現状を変える」という意味を持つようになる。

また「革」という漢字は五経のひとつである中国周代の占い書「易経」から派生した言葉で、「革命」という意味を持つ。革命の「革」は更新する、「命」は天命を意味している。古代中国では、天子が世界を支配すると言われていた。これによると、革は天の秩序が変わり、王朝が変わることを意味していた。

日本でも平安時代初期以降、支配者を変えることを目的として「革」という漢字が使われた。しかし、明治時代(1868-1912)になると、革は「革命」の訳語となり、支配者層が権力を握ることで社会が変わることを意味するようになった。

さらに、「革」は既存の社会を覆す急激な変化という意味で、政治とは関係なく「急激な変化」を表す場合に使われるようになっている。